図書館の興亡

読書

マシュー・バトルズの「図書館の興亡」 草思社

僕は大きな図書館が好きだ。書架が作る迷宮をさまようのが好きなのだ。だが、図書館が僕のような普通の人がさまようことの出来る公共のサービスとなったのは近年のことだ。

図書館の始まりは古代アレクサンドリアと思われがちだが、そうではない。人類最初の図書館は紀元前三千年頃のメソポタミア、収蔵された本は全て粘土坂だった。図書館はその後、学問の礎として、ある時は宗教的権威の拠り所として、あるいは政治的権力のシンボルとして機能してきた。だからその歴史には常に暴力、破壊、火事がつきまとう。

焚書を行ったのは始皇帝だけではない。ナチスや中国共産党も、過去から継承されたかけがえのない本を破壊することに執拗だった。輝かしい学問、知の殿堂としての図書館は、同時に血塗られた歴史を抱えているのだ。

だから図書館には亡霊がいる。僕が書架の迷宮の探検に疲れ果て、最後に1冊の本にたどり着くとき、かすかに亡霊のささやきが聞こえるように思うのだ。

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