ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」 創元SF文庫
僕の時代に全ての男の子が見た夢、それはいつの日か人類が技術の粋を集めた宇宙船を作って惑星間航行を実現するというものだ。そして惑星間に人類が縦横無尽に展開するという骨格のSFが、スペースオペラと呼ばれて人気だった。
だが、大人になるにつれて科学の発展はそれほど目覚しいものでないことを知るようになる。惑星間の航行が極めて難しいことだと分かってくる。そしていつのまにか、「子供の時に見た夢」のひとつになる。
だが、はやぶさは別の形でそれを成し遂げた。無人の探査船として7年の惑星間航行を行い、あらゆる困難、危機を乗り越えて地球に帰還したのだ。はやぶさはまたたくまに擬人化され、偉大な冒険者となった。そう、はやぶさは惑星間航行という、僕らの子供時の夢を実現させた英雄なのだ。
ということで、子供時代の血が騒ぎ、再びスペースオペラ的なSFが読みたくなった。僕は1980年代くらいまでの名作と呼ばれるSFは大体読んでいるのだが、1977年に書かれた「星を継ぐもの」は、名作との誉れ高い作品にもかかわらず読んでなかった。今回赤レンガ図書館の新規購入のコーナーにあったので借りてきたのだが、確かに科学というものの夢、魅力を真正面から描いたところが素晴らしい。久しぶりに宇宙の果てに想いを馳せることができた。
民主党の総裁選が世を騒がせているが、「星を継ぐもの」を読んですがすがしい気持ちになったので、茶番の方をコメントするのはやめておくことにした。
コメント
こんにちは。相変わらず旺盛に読書されておられるようですね。
このホーガンの3部作は、80年代初めに読みましたが、印象に残る作品でしたね。
当時の創元社は元気でした。レンズマンやバロウズの火星シリーズ、金星シリーズなどむさぼるように読んだものでした。
古き良きアメリカの知性が感じられる作品ですね。
このホーガンの作品は、このシリーズの、ガニメデの優しい巨人 と 巨人たちの星 それから、プロテウス・オペレーションなど読みましたが、科学技術の発展と人類の知性に対する優しい信頼感が滲み出ていて、今のアメリカ製映画などに見られる暴力性は感じないで済みました。
富山さん
こんばんは。相変わらず暑いですね。
富山さんが3部作を同時代的に読まれたことが、ちょっとうらやましい気がきます。でも「星を継ぐもの」は現在の私が読んでも、全く古さを感じなかったです。
真正面から科学に相対する姿勢と、科学の原点である未知なるものへの探求を謎解きという形で小説に取り込んでいることが、普遍的な高みに作品を押し上げている気がしました。確かに古き良きアメリカ、その良心を感じさせる作家ですね。
その内にホーガンの他の作品も読んでみたいです。