「普通がいい」という病

関谷閑示の『「普通がいい」という病』 講談社現代新書

理性と心の関係がこの本の主題である。精神科医の著者は理性が過剰に心を支配した結果として現れる様々な病理を説明する。現代の社会は理性の優位が前提となっているのだが、著者が過去の様々なテキストを用いて明らかにするのは、理性の限界である。

このため膨大なテキストが動員される。テネシー・ウイリアムスから始まり、ドストエフスキー、コクトー、フロイト、シェークスピア、パスカル、ニーチェ、イプセン、空海、親鸞、スエデンボルグ・・・。

この本のすごいところは、それらのテキストが著者の主張「心を理性の管理から取り戻さねばならない」を補強することだけに使われることである。古今の学者、宗教家、作家のテキストに表現された、あるいは隠された理性批判が巧みに取り出され、とても分かりやすく解説される

この本には僕が尊敬するエーリッヒ・フロムも登場する。フロムは「自由からの逃走」で人がファシズムに傾倒していく心的過程を説明した偉大な心理学者であり思想家だが、近年は行動心理学やポストモダンの系列と独立しているため、忘れられた存在となっていた感がある。

直感の力を信じる僕は、この本で関谷閑示が繰り返し提示する理性批判に賛同するものである。しかし彼がフロムの再評価をしてくれたことが、一番印象に残ったことも確かである。

2件のコメント

  1. こんばんは。
    そうですか。スパムに入ってましたか(~_~;
    以前、私の本のコメントを書いてくださっていたのを紹介されて
    ここに来ました。
    山にも登られているようで、同じような趣味をお持ちですね。
    今後とも、よろしくお願いします。
    本の補遺を私のHPに上げておりますので、よろしかったら
    御覧ください。
    当方へのコメントも何か書いてやっていただければ有り難いです。

  2. こんばんは。

    山と古代史に共通するのは、ありふれた言葉ですが、ロマンティズムかなと思います。勝手ながらHPをリンクさせて頂きました。補遺はゆっくり読ませていただこうと思います。

    今後とも宜しくお願い致します。

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