世界は分けてもわからない

読書

福岡伸一の「世界は分けてもわからない」 講談社現代新書

福岡伸一の本を読むのはこれが3冊目だ。今回も色々と学者らしからぬ凝った構成、しかも生物学の発見に関する実話が謎解き仕立てで紹介される。

彼の本にはいつも生命の不思議さ、複雑さが行間に満ちているのだが、特に面白かったのが生命現象における動的な秩序を維持するために細胞をこわす仕組みである。どうやら細胞を作る仕組みより、こわす仕組みの方が格段に精密にできているらしい。

そこで比喩的に考えてしまうのが、政治や経済における秩序のあり方だ。細胞の例に端的に見られるように、持続可能なシステムというのは、それ自身を変化させることを可能としている。つまりシステムにはある種のゆらぎが内包されていなければ、システム全体がむしろ早く老化していまうのである。

例えば米国の場合、移民を受け入れることで、システムにゆらぎを与え持続可能な社会を作っていると考えられる。日本はどうか?残念ながらそのような動的な平衡に相当する市場は、絶対悪として糾弾される。そのような静的な社会に結果として待っているのは、システムの緩慢な死である。

静的平衡に対する動的平衡の優位というようなシステム論の観点からも、今の日本に必要なのは市場であり、競争であることが分かる。変化を拒絶し、資産を右から左に移転することにより静的な均衡を得ようとする民主党の政策の先に何が待っているかは、言うまでもないだろう。

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