突然死の話

読書

沖重薫の「突然死の話」 中公新書

今回は珍しく知人の書いた本。著者の沖重薫は心臓外科医として30年間、臨床の第一線で活躍してきた人である。この本は一般向けに書かれたものだが、心臓に潜む身近な危険、それに対する最先端の医療技術、そして彼のような権威をもってしても困難な診断の実際が詳しく書かれている。

一般向けといっても、専門用語は多いし、原理からていねいに解説しているので、まるで大学の講義のようで面白みにはかけるかも知れない。それに「こういう症状があるとここが危ない」、というようなマニュアル本的な表現は全くない。むしろ、心電図から心臓病の兆候を見出すことの繊細さや困難が面々と書かれており、当人の心臓外科医としての苦労、そしてそれを乗り越えて仕事をしている誇りがにじみ出てくる。

つくづく心臓外科医って大変な職業だと思う。

この本を読むと、医者にとって心電図の解釈が、知識と直感を要するとても重要なステップであることがよくわかる。僕のような工学系の技術者から見れば、心電図を電子的にパターン解析して、可能性のある疾患を確率表示できないか、なんて安易に考えてしまうのだが、それができればもう誰かがやっているはずだ。心電図の解釈には知識と経験に還元できないアーティスティックな感性が必要なのかもしれない。

ちなみに僕はといえば、健康診断の度に心電図の欄に必ず「左脚前肢ブロック」と書かれる。ある種の不整脈である。若い頃には、体中にセンサーを付けて1日をおくるトレッドミルという検査を行ったことがあるが、健康に問題なしという診断だった。昔は不整脈を自分で感じることも多かったが、最近はそれもほとんどない。当面は心臓に関して、著者の手をわずらわせることにはならない自信がある。

著者にそんなことを言えば、心臓を甘く見てはいけないと、お説教をされそうであるが。

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