記憶がウソをつく!

養老孟司&古館伊知郎の「記憶がウソをつく!」 扶桑社

昔から記憶にはとても興味があるので、養老孟司と古館伊知郎という変な組み合わせだけど、GWの軽い読み物として借りてみた。

対談形式にも関わらず、記憶に関する最近の脳科学や心理学の成果が手際よく散りばめられており、周到に計画されたものだと感じた。記憶が物語として構成され、常に更新されていることが最近の通説となっているが、そのような面白いところはよく押さえられている。

古館がアナウンサーとしての体験を披露して、養老が脳科学的にどのような意味があるのかを解説するというスタイルなのだけど、古館は事前によく勉強している。古館が先回りして生半可な結論に自分で持っていこうとするのだが、養老が簡潔にそうではなくて・・・、と解説するのが面白い。

TVのアナウンサーとしての古館伊知郎の持ち味は、画面を言葉で埋め尽くすような言葉の連鎖の能力だろうけど、対談の場合はちょっとうるさいと感じる。そこを我慢すれば、結構良いコンビではないだろうか。

最後の方は話題も色々な方面に飛ぶが、養老の最近の労働環境に関するコメントが僕の興味を引いた。
「うーん、今のリストラは中途半端ですよね。人を減らすんじゃなくて、会社をすっぽり丸ごとリストラしちゃえば、力が出るんだけど、半端だと結局効果はでない。」
脳心理学的な観点からも、日本に必要なのは近視眼的な労働者保護施策ではなくて、流動化施策であることを指摘しているのだが、民主党のような社会主義的施策の無効性が図らずも脳科学者から指摘されたことになる。

記憶に関する内容よりも、ふたりの脱線が興味深い本だった。

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