久生十蘭

澁澤龍彦が好きだった久生十蘭の短編集を読んでみました。図書館から借りたのは結構厚い本だったので、そのうちの1930年代に書かれた短編5編を選んで読みました。「黒い手帳」、「湖畔」などの4作品は幻想的というか魔術的なにおいのする推理小説ですが、テンポ良く物語が展開して面白かったです。

最後の1編が「地底獣国」で、僕の好きな冒険活劇系の短編でした。名前から分るとおり、ベルヌの「地底旅行」から基本的なモチーフを借りており、お約束のようにプテラノドンやティラノザウルスが出てくる展開です。ロシアがシベリアから樺太へ通じる地下通路を発見し、それを日本への攻撃拠点とすべく科学者を送り込む、というような筋立てが時代を感じさせて興味深いです。様々な領域で才能を発揮した久生十蘭ですが、冒険物は残念ながらあまり得意ではなかったようですね。

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