「日本国」はいつできたか

大和岩雄の『「日本国」はいつできたか』(大和書房)

少し前、谷川健一による邪馬台国東遷説の本を読んだのですが、ここでは日本の国号の由来を、「ひのもと」=日の昇るところとし、その発生の原点を、記紀に歌われた河内の日下(ヒノモトノクサカ)にあるとしていました。記紀では日下を、神武天皇が九州から東遷、上陸して最初にナガスネヒコと戦って敗れた地として記しています。神武は敗戦の理由が太陽に向かって戦ったからだとさとり、迂回して太陽を背にして戦うことにより勝利することになります。つまりアマテラスに繋がる太陽神信仰が、ここで直接的に表されているわけです。

大和岩雄はこのような日本国号の由来の諸説を、分類、批判しているわけなんですが、谷川の説については年代的な課題を指摘しつつも根拠の合理性を認めています。その他、騎馬民族征服説の江上波夫とか、九州王朝説の古田武彦とか諸説を批判しているのですが、特に徹底的な批判を加えているのが、古田武彦に対してです。

古田武彦は7世紀頃まで大和と九州に別の王朝が並存していたという説を唱え、一時はかなりの賛同者がおり、安本美典と論争を繰り広げたりしていたのですが、自分に都合の良い資料のみを使うという議論の仕方(これは考古学の世界では結構あたりまえ)があまりに極端で、『東日流外三郡誌』という後に偽書だと判明した本を賛美するなどしたため、いまではほとんど参照する人もいません。

論壇から消えていった古田武彦なんかも出てくるところがちょっと古さを感じさせますが(この本は1996年発行)、記紀や新旧唐書の解釈に始まる日本国号成立の議論としてとても良く整理されてました。

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