言葉・狂気・エロス

丸山圭三郎の「言葉・狂気・エロス」(講談社学術文庫)

丸山圭三郎は、「イカ天」と「ペレストロイカ」を題材に、言葉と表層意識の境界を語るところから始めます。この本が書かれた1990年頃は、それが最新のトピックだった訳ですから、文句なく刺激的な出だしだったに違いありません。でも今だと、ちょっと懐かしさが先行してしまいますね。

丸山圭三郎という人は世界的なソシュール研究者で、僕もご多分に漏れずソシュールについてはこの人の本を読んでます。というか近代思想に関心のある人で、丸山を読んでない人ってあまりいないのではないでしょうか。今回の本は丸山自身の思想(といっても根底にソシュールがある)を提示してるのですが、丸山が言語学、記号学、心理学、現象学、構造主義からポストモダンへという、近代思想の系譜の全てに精通した碩学であることを初めて知りました。

僕のささやかな本棚には、持ち主の理解を超えた内容であることが分かって、棚上げされ、持ち主の再挑戦を待っている本がいくつかあります。丸山のこの本で、その中の二つ「薔薇の名前」(ウンベルト・エーコ)と「モードの体系」(ロラン・バルト)が取り上げられていたのはちょっとうれしかったです。この本を読んで、そうだったのか!とある種、名探偵の解決が提示されたような気持ちがしてくるのですが、たぶん事態はそれほど甘くなくて、もう一度挑戦するとまた新たな謎の迷宮に入るだけなのでしょう。

とにかく丸山の思想体系は僕の興味の範囲をカバーし、それをはるかに広く包含しているので、どこを読んでも面白いということになってしまいました。いずれは丸山から得たインスピレーションを手がかりに、「薔薇の名前」と「モードの体系」を読み直したいです。

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