「IMFのいいところはいつも同じことを言ってくることです。『利上げしろ』と。悪いところは彼らの経済分析が本当にひどいものだったということです。」・・・スティグリッツ早稲田大学講義録(光文社新書)
グローバリゼーション再考と副題が付けられたこの本は、スティグリッツが2004年に早稲田大学で行った講演をまとめたものです。アメリカ発の経済恐慌が世界を覆いつつある現在、グローバリゼーションの意味が今ほど問われている時はないと思います。
2001年にノーベル経済賞を受賞した著名な経済学者であるスティグリッツの講演ということで、難しい内容を予期してたのですが、スティグリッツはとても分りやすい言葉で経済の基本的な理論を語ります。ここでスティグリッツは「神の見えざる手」を絶対化する経済原理主義を実証性のない空論として徹底的に批判します。そしてその鋭い舌鋒は、ワシントンとウォール街の利益代表と化したようなIMFに向けられ、その数々の失策を容赦なく弾劾します。
もうこれはただ読むだけで、胸がすかっとするような読書体験です。なにより論理が明快です。それに自国の利益とか、権威とかを一顧だにしないスティグリッツの挑戦的態度が気持ちよいです。
経済の理論って経済学者の数ほどあると言われるのですが、良い理論はやはり簡潔さを備えており、コモンセンスの延長上にあるのだと実感しました。それにしてもどこの世界にも原理主義は存在し、改革や公正さを阻害しているものなのですね。
グローバリゼーション原理主義を批判的に理解するには、最適な本のひとつだと思いました。
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