福岡伸一の「もう牛を食べても安心か」(文春新書)
狂牛病には関心があるので、この問題を扱った本を図書館で探してみましたが、福岡伸一の本があったので、借りました。2004年とちょっと古いのですが、メディアによって公表された事実、行政が流す情報というものに全く信用が置けないこの国では、それがどのような問題なのかという課題認識が最も重要なのです。
福岡は、「生物と無生物のあいだ」で論じた「生物とは何か」というような論点から、徐々に論点を明確にしていきます。そして生物の防御システムの複雑な仕組みを、分りやすく説明します、福岡は、さらに長い間原因が突き止められずにいた狂牛病に対する医学者の様々な仮説、論争、栄誉、誤謬を、お得意の医学者観点からの競争の歴史として語るのです。そして、そこが抜群に面白い。
この本を読むと、(毎度のことですが)日本の行政の怠慢、欺瞞に暗然とさせられます。そこの改革ももちろん必要ですが、個人の問題意識を高める必要もありそうです。例えばアレルギー体質と生体の防御システムが開く時期とは関係があり、不必要に離乳時期を早めるとアレルギー体質につながりやすいことなどは、個人の意識で対応可能であり、その意味でもっと広く議論されてしかるべきでしょう。
人間存在は動的な平衡系の一部であり、部分を取り替えたり、いじったりすることで解決が得られる保証はないという福岡の主張はとても説得力があります。福岡には、狂牛病のみならず、臓器移植や遺伝子組み換えの潜在的なリスクの告発者として、これからも活躍して欲しいです。
P.S. ブログのタイトル「空想読書館」の左にロゴを入れました。ちょっとデザインがいまいちかな?とりあえず作ってみました、ってところです。
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