赤瀬川原平の「芸術原論」(岩波現代文庫)
またまた赤瀬川原平を読んでしまいました。この本は、1960年代の赤瀬川の過激なアート活動から1980年代の、トマソン、路上観察に至る思考の歩みが書かれて、今見ても新鮮ですし、何より知的好奇心を刺激してくれます。
赤瀬川の到達した「路上観察」という方法論は、作家の意図、独自性を完全に否定し、創造性というものを鑑賞者側に完全に委ねるのですが、これは西洋的美術のパラダイムを破壊し、西洋的美術の市場論理に敵対するある種危険な考えです。
それゆえ路上観察は美術の世界から、意図的に無視あるいは疎外されてきました。でも僕は現代の商業化されたアートに突きつけられた究極の問いが路上観察であり、「芸術」はいつまでも彼をアウトサイダーのままでいさせることはできないと思います。
美術のあり方を徹底的に破壊したマルセル・デュシャン。赤瀬川がデュシャンについて書いていることは、どんな美術史家より本質を突いています。おそらく現代アート(というジャンルが今後も意味を持つとすればの話だけど)の世界で、赤瀬川がデュシャン以降の最も重要な作家と認められる日がくると思います。
最も、僕が赤瀬川を好んで読むのは、芸術の方向性を考えてみると言うよりも、彼が意識や論理の下に巧妙に潜ませる「笑い」や「カタルシス」を味わいためなのですが。
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