ひらがな日本美術史1

橋本治の「ひらがな日本美術史1」(新潮社)

この本は、橋本治が14年に亘って芸術新潮に連載した内容を、7巻にまとめたものの第1巻目です。日本美術の通史(意外に結構珍しい)となっているのですが、もちろん縦横無尽に橋本流の解釈で貫かれたものです。

弥生時代のはにわが「かわいい」というところから入り、平安朝の源氏物語絵巻、法隆寺、鎌倉運慶・快慶論と筆を進めるのですが、知識としての美術論の前に常に橋本独自の感じ方や疑問が先にある。これって美術の見方としてあたりまえの話なのですが、それを日本美術の全ての年代、分野において一貫性のある議論として実践するなどという芸当は、やはり橋本治にしかできないことだと思います。

例えば伴大納言絵巻について、僕が以前から疑問に思っていたことは、なんでこんなマイナーな事件がこのような美術史上の傑作の題材として取り上げられたのか?ということです。これについて橋本は政治的背景と同時に、「火事」に民衆をひきつける事件性があったからだと言います。そして、大抵の美術書なら「異時同図法」の説明なんかが重きをなすのですが、橋本はストーリーの展開の仕方という「ひらがな」的な観点から、「信貴山縁起絵巻」や「鳥獣人物戯画」ではなく「伴大納言絵巻」が日本アニメのルーツであると断言します。

このあたりは、美術史的に大いに異論が出るところだろうと思いますが、僕は別に正統な美術史が学びたいわけでもなんでもないし、権威化された美術というものにほとんど興味がないので、橋本の議論を素直に受け入れてしまいました。

このシリーズは写真を豊富に入れた大きな製本で、通勤時間にはとっても読めないのですが、時間がかかっても全部読みたいと思ってます。とにかくめっぽう面白いとしか言いようがありません。

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