かざりの日本文化

「かざり」の日本文化/辻惟雄(角川書店)

この本では、「かざり」というキーワードで、美術史家や服飾専門家などが日本の装飾文化を語ったものを、辻惟雄が監修したものです。前に読んだ本「日本美の構造」とは正反対に、日本文化の装飾性を肯定的に眺めたものだから、読んでいて楽しかったです。

切り口としては、見立て戦国武将のかざる精神の分析や王朝の飾り物から、蒔絵の箱、歌舞伎の大道具、明治の洋風の室内装飾など多彩ですが、やはり面白かったのは、日本美術における「金」と「銀」の使い方の論考です。

特に、玉蟲敏子の「銀」の意味的な歴史の論考が面白かったです。銀には、金の脇役としての位置と金=太陽に対する月の表現として定番の役割があったのですが、光琳の「風神雷神図屏風」の裏絵として名高い酒井抱一の「夏秋草図屏風」における銀に、追憶の意味を見るところなど、日本文化の特徴的な美意識の分析として面白かったです。

他の論考も興味深い論点が多く、監修に当たった辻惟雄というひとは、押さえどころを知っている人だと思いました。ということで、辻の他の本も読んでみたいので、図書館で借りようとしたら、2冊とも予約が入っていました。

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