「マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」と副題されたドン・タプスコットとアンソニー・D・ウィリアムスの「ウィキノミクス」を読みました。じっくり読もうと思って、図書館で借りずに購入しました。
この本は現在の先端的なビジネスの傾向と将来の勝者のありかたを議論しています。Linux、グーグル、アマゾン、WikiPedia、ipod、マイスペース、etc. これらの現在の勝者が持っている不可欠の要素とは何か。この本は、それがマス・コラボレーション、つまり従来の企業を越えた協力、参加のしくみだと言います。
もちろん、そのようなコラボレーションを低コストで可能とするインターネットというしくみがあることが前提なのですが、問題はインターネットを用いてこれからの価値を生み出すやりかたです。この本では、これからのビジネスは、自らの知的所有権を独占的、排他的、垂直統合的に囲い込むのではなく、企業の枠を超えたコラボレーションを積極的に行うことが必要だといいます。それどころか、それ以外に勝者となる道はないのだとさえ言います。
ただの理想論のように思えますが、多くの具体的なビジネスでその可能性を検証しているので、説得力があります。
僕は以前技術の標準化に深く関わったことがあるのですが、標準化って自分の持つ技術をある程度公開しなければ、そもそも有用性が理解されないのですから、標準になることはありません。ですから技術の標準化にはノウハウなり知的所有権を公開するデメリットと、その技術を独占的に行使できるメリット、この相反する要素が必ず存在します。それでもほとんどのビジネスでは標準とすることのメリットの方が大きいのです。
標準化と同じように、ビジネスにおいてコラボしないこととコラボすることのメリット、デメリットを比較すれば、コラボする方のメリットが勝るのです。
問題は、このような標準化やコラボレーションって日本人が苦手とする領域であることです。この本には様々なビジネスが登場しますが、日本の企業はコラボレーションに敵対する古い世界のメンバーとして登場することが多かったですね。
労働集約型のビジネスでは無類の強みを見せた日本の企業ですけど、これからはそうは行かない、ということのひとつの警鐘として見ておくべき本ということになりますが、日本にも例えば動画のマッシュアップとしてニコニコ動画という先鋭的なWEB技術があります。
そもそも江戸の文化を支えたのは人的ネットワークとコラボレーションだったことを考えると、別に悲観することでもないのかもしれません。
コメント