荒俣宏の「奇想の20世紀」(NHK出版)はとっても荒俣宏らしい本、輝かしい未来イメージのデパートのような本です。
20世紀はパリ万博で始まったといって過言ではありません。荒俣宏は例によって豊富な資料を駆使し、1900年のパリ万博に詰め込まれた「未来」を解読していきます。そしてパリ万博にインスパイアされ「未来」を形作ることになった様々な製品、シンボル、ビジネスが登場します。エッフェル塔、列車、世界旅行、電気、摩天楼そしてデパートメントストア。
そこには成長の限界の予感が微塵もない「進歩」と「未来」のみがあります。パリ万博こそは、破局へ向かうパンドラの箱が開かれた祝祭のイベントだったのです。
この本をパラパラとめくり、20世紀初頭の工業的イメージを見るだけでも面白いのですが、荒俣宏の筆は最後には絵画やファッションにも及びます。例えば20世紀の芸術家が植民地から文物を収奪し、それをアートに取り込んだことを指摘します。
荒俣によれば、ピカソやマティスは、植民地の生活から表現を「収奪」したのであり、それは世界から歴史とリアリティーを排除し、意味を剥ぎ取り、都合の良い「表現」のみを作品に取り込む行為であった。そしてそのテクニックこそ、我々が通常「ファッション」と呼んでいる行為である。
この簡潔な結論が最後にあったため、なにやらポストモダンの香りのする知見に満ちた本を読んだような気がしました。つまり荒俣宏は、本の終わり方が巧妙なのです。
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