三途の川の渡り方

「三途の川の渡り方」(カッパ・ブックス)は、水木しげるの霊界案内です。

水木しげるはこの本で、古来から日本人が信じてきた死後の世界を語ります。もともと日本には死後の魂を信じる素朴な宗教観があったのですが、それに仏教の世界観が習合して、三途の川を渡って六道を転生する輪廻転生の宗教観が定着しました。

水木しげるは別に、死後の世界や霊の存在を立証しようとはしません。彼はそうではなくて死というものが隠蔽された現代に比べ、古来の日本のように死が生と一体であった世界の方が楽しい世界だということを、三途の川ツアーの案内人となって語るのです。

水木しげるが、祈祷師の旦那さんをもつ「のんのんばあ」のおどろおどろしい話を聞いてその想像力を開花させたという話は、結構知られた話です。しかし、この本で始めて知ったのですが、水木しげるの家はラフカディオ・ハーンが「知られざる日本の面影」で取り上げた、冥界に通じ子供の霊が集まるという「加賀の潜戸」の近くにあったのですね。水木しげるがあのような優れた妖怪画を生み出せる背景には、彼が日本古来の宗教観が残りかつアマテラス以降の一神教や仏教の影響が少ない「場所」に生まれ育ったということも、大きく影響しているのでしょう。

ところで僕はゲゲゲの鬼太郎からの水木しげるファンですが、ゲゲゲの鬼太郎では何と言っても、いつもずるをして鬼太郎を出し抜こうとするが、結局最後にへまをやって馬鹿を見るねずみ男のキャラクターが好きです。

ねずみ男こそは、「人間と妖怪の境界」=「一神教と多神教の境界」で苦悩する鬼太郎が最終的に目指すべき人格なのだ、というのが僕の見方です。

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