年末の散歩

あけましておめでとうございます。

長い風邪から回復して年末に少し出歩いたので、今日はそのお話を。

ひとつは東京都現代美術館で行われている「Space for the Future - アートとデザインの遺伝子を組み替える」を見に行ったことです。この企画はNHKでこの企画を担当したキュレーターの特集番組をやっていたので、ご覧になった方も多いと思います。一番の売り物が、現代美の巨大な吹き抜けのスペースをほぼ一杯にするアルミの風船のような宙に浮いた構造物です。その他内外の気鋭のアーティストの作品が集められ、そのキュレーターのディスプレイの技が光る、はずだったのですが。

結論から言うと、とても退屈だったというのが正直な感想です。まず空中構造物ですが、TVで入念に紹介されてはいたけど実際に見たらすごいだろうな、と思っていたのですが、これが全く予想どおりのしろものなのです。この作品の価値は、巨大さとか、それに反するような浮揚感とかの「驚き」だと思うのですが、それが既にインプットされた情報からの予想の範囲を全然出ない。

この作品はすぐそばで寝ころんで見ることが出来るように、アレンジされているのですが、そこで下から見上げながら思ったことは、この作品効果はルネ・マグリットの「ピレネーの城」(空中に浮かぶ岩の城の絵です)が与えてくれる奇妙な驚きの足元にも及ばないな、ということでした。

それ以外の展示の中では、面白いものもいくつかはありました。結構面白かったのは、動いたり光ったりする電気仕掛けのファッションの作品です。作品のひとつなどは、モデルの帽子の中にドレスがすっかり巻き取られてしまうのですが、ちょっとアンドロイド的なモデル(SF映画ブレイドランナーのプリスを思い出した)と良くマッチしていました。

TVで紹介された鳴り物入りの企画なのですが、観客を退屈させた(僕だけじゃないことは確か)大きな原因が、過剰な前宣伝(NHKがかってにやったのかもしれないけど)で観客の想像力が喚起される余地がなくなってしまったことにあることは間違いありません。また、これがこのキュレーターのテイストなのかもしれないけど、色々な刺激が同時的に生起する現代の混沌とした現実のはるか先をいくような狂気や孤独が見当たらない。みんな丸すぎるのです。後で常設展も見たのですが、個々の作品にはっきりいって企画展とは比べ物にならないほど明確なメッセージが感じられました。

大晦日は、川崎まで家族で出向いて、西村智実指揮の東京交響楽団を聞きました。前半はオペラ曲のハイライト集、後半はチャイコフスキーの「白鳥」と「くるみ割り」のハイライトと、年末にふさわしい?いいとこどりのプログラムです。特に後半は小さな舞台ながらバレーダンサーが登場して、結構楽しかったです。

このミューザ川崎というホール、初めて行ったのですが、オーケストラをぐるりと観客が取り囲む構造になっていて、なんかギリシャのコロシアムの中にいるような感覚が新鮮だったです。休憩時間にホールの共用スペースに出たら、岡本太郎のモザイク画「空の散歩」が掛かっていました。大晦日にちょっと得した気分でした。

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