ひさしぶりにミュージカル映画を見ました。話題の「ヘアスプレー」です。
この映画、デブの女の子がいきなり元気いっぱいに歌いだすところから始まるのですが、テンポの良い演出とノリの良い音楽、そして誰にも夢をかなえるチャンスがあるんだというストレートなメッセージで最後まで一気に突っ走ってしまいます。
舞台は黒人差別がいたるところに残る1960年代のボルチモア、主人公の女の子が素人参加のダンスTV番組に出演するという夢をかなえるまでを描いているのですが、とにかくおよそヒロインとは似つかわしくないこのデブの女の子が歌い踊るさまが、とても気持ちよく楽しいのです。
もとはカルト的な舞台ミュージカルらしいのですが、筋書きはとても巧妙です。ここではTV番組を中心にふたつの物語が同時に進行します。黒人の差別解消の物語とデブへの偏見解消の物語です。
このTV番組には月に一度だけニグロ・デーとして黒人が出演できる日があるのですが、女の子の友人の黒人達がやがてデモなどを通して差別のない番組に変化させることに成功するというのがベースとなるプロットです。
観衆が歴史的な流れとして受け止められる最初のメッセージと、「デブはひとつの個性だ、これからは多様性の時代だ」というメッセージを同時並行で発することにより、主人公の女の子がヒロインとして輝いてくるのです。
一歩下がってみると、肥満の人の比率が3割を超えたと言われる米国の現状、あえて言えばマーケットニーズがこの映画を作り出したとも言えます。
でもそんなことよりもなによりも、この映画の元気のよさ、面白さ、正直なメッセージは賞賛にあたいすると思います。
ちょっと気になったのが翻訳で、英語の「ニグロ・デー」が日本語字幕で「ブラック・デー」と言い換えられていたことです。多分ニグロは日本では差別用語で使うことができないのでしょうが、歴史から差別語をなくすことにより差別を見なかったことにしようとする安易で官僚的な発想は、そろそろやめて欲しいものです。
ちなみに女の子のやはりデブな母親役をジョン・トラボルタが演じているのですが、とてもよい味を出していました。最後に主人公と母親が一緒に踊るシーンが出てきたので、サタデー・ナイト・フィーバーのようなダンスを踊るのかな、と思いましたが、あくまで母親役としての踊りに徹していました。
個人的には映画の最後だから観客にサービスしても良かったのでは?と思いました。
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