2006年に行かなくて後悔した展覧会が、現代美術館で開かれた大竹伸朗の全景展だったのですが、2007年オペラシティの「藤森建築と路上観察展」も行くべき展覧会でした。結局見逃してしまったけれど。
その原点である赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊の「路上観察学入門」(筑摩書房)は1986年の刊行ですが、今読んでもとんでもなく面白い本です。
美術というシステムに異義をとなえ、その存在意義に致命的な一撃を与えたのがマルセル・デュシャンであり、彼以降の現代美術はデュシャンの呪縛からひたすら逃れる術を模索していたとも言えるのですが、赤瀬川原平は「路上観察」という素人的、境界的、脱力的かつ前衛的なアクションでデュシャンの呪いに挑戦するのです。
僕は日本の古典美術への興味に付随して、制度としての西洋美術が変容し解体されていく様に物語としての興味を覚えるのですが、赤瀬川原平こそデュシャン の呪いを解いた呪術師と言えるのではないでしょうか。
とは言っても、美術史は依然として西洋美術の方法論と史観の延長線上にしか存在せず、少し前に取り上げた宮下誠の「20世紀絵画」も高階秀爾の「20世紀美術」も、東洋と西洋を普遍的に批判する視点を提示できていないと思います。
なんか、また美術に対する制度的な批判に話が行ってしまったのですが、「路上観察学入門」はそんなこととは関係なく実用的に面白いし、それゆえ都市や趣味をキーワードとするような雑誌に大きな影響を与えて来たことは確かです。
また、藤森照信という建築学の学者がこんなに面白い文章を書くことに驚きました。赤瀬川原平の周りには山下裕二という無頼の美術史の学者がいるのですが、文章の面白さではむしろ藤森照信が勝っているでしょうね。
とにかく3重丸付きの面白さがこの本には詰まっています。
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