明治おもしろ博覧会

横田順彌って日本の古いSFの研究で有名な人ですが、特に明治から大正にかけての日本の痛快な人物を語らせたら、この人の右に出る人はいないでしょう。数多い著書の中には、「快男児押川春浪 日本SFの祖」なんていうのもあります。

今回読んだ「明治おもしろ博覧会」は、佐賀県出身の横田順彌が西日本新聞に連載したもので、九州に関連のある明治時代の事件、人物のエピソード集です。

改めて思うことは、明治時代の日本は探検と冒険の時代だったということです。

この本には南島探検の笹森儀助や南極探検の白瀬中尉などの有名な人々をはじめ、明治34年から60カ国を無銭徒歩旅行した中村直吉や同じく明治34年に自転車で世界無銭旅行をした中村春吉、それから明治39年からフィリピンからマレー半島を冒険した児玉音松(セレベス島で大蛸と死闘を演じた!?)、フィリピン独立運動に身を投じるも25歳でコレラに倒れた菅沼貞風など、事実とも小説ともつかない押川春浪的冒険世界を生きた人たちの話が語られています。

この本には冒険家だけでなく、実に様々な人たちのエピソードが登場します。姿三四郎のモデルとなった西郷四郎と稽古の鬼と言われた徳三宝、超能力者として有名になったがその能力を信じられず服毒自殺した御船千鶴子、フランスに渡りフランス陸軍航空隊に入隊、ドイツ空軍を相手に獅子奮迅の活躍をしたバロン滋野こと滋野清武、小説を書き、女優となり、活弁、落語家としても活動した才気煥発の女傑本荘幽蘭などなど。

押川春浪に連なる何人かの冒険小説家も紹介されているのですが、面白いと思ったのは、金田一耕助シリーズで有名な横溝正史が南洋を舞台にした「南海の太陽児」という冒険小説・・・ボルネオの奥地に宇佐八幡が祭られている「やまと王国」が存在する・・・を書いていたことです。どうやらイギリスのハガードの「ソロモン王の洞窟」をベースにしているらしいのですが、三一書房『少年小説大系』に(海底軍艦と共に)収録されているのが分かったので、さっそく図書館予約システムで取り寄せました。

その感想はまた次回。

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