ゴードン・スミスの日本怪談集

最近読んだ本:
・ゴードン・スミスの日本怪談集/荒俣宏監修(角川書店)
・よみがえるカリスマ平田篤胤/荒俣宏(論創社)

ゴードン・スミスはラフカディオ・ハーンより少し後に来日し、ハーンと同じように日本に魅せられて、様々な事物の博物的収集を行った人です。彼の日記は「ゴードン・スミスのニッポン仰天日記」として出版されていて、博物誌好きには既に有名なのですが、今回読んだのは、彼が収集した日本の怪談集です。

荒俣宏監修のこの本には、ずっと英国で埋もれていたゴードン・スミス収集の多くの怪談の中から特に秀逸なものが収められています。ゴードン・スミスは、文学者ではなく博物系の人ですから、ハーンのような魅力的な文章を残したわけではないのですが、そのかわり全編に美しい挿絵が折り込まれています。富豪だったゴードン・スミスは何人かの日本の絵師をやとって、収集した全てのお話に怪奇と幻想に満ち溢れた絵を描かせたのです。

お話は怪談というより、とても美しい愛と忠義の物語ばかりで、かつて古い日本のどこにも存在した怪異、妖怪がむしろ物語の当然の要素として登場する感じです。物語の舞台も蝦夷、沖縄、松江、長野等日本の各地から収集されています。

ちょっと残念なのは、本の表紙に直接関係のない「百鬼夜行絵巻」の一部が使われているため、一見すると単なるお化けの本としか見えないことです。物語も絵も美しいとしか言いようがないのに、なぜその挿絵の一部を表紙に使わなかったのか、大いに疑問です。

もうひとつの「よみがえるカリスマ平田篤胤」は、荒俣宏が平田篤胤の国学者という側面よりもその民俗学的側面からその実像に迫ろうとしたものです。

本居宣長から平田篤胤に至る国学の系列はアジア覇権主義の思想的拠り所として軍部に利用されたため、今では彼らが肯定的な文脈で語られることは少ないのですが、平田篤胤と言う人は実際は、進んで蘭学、印度学、儒学、仏教、道教を修め、人体の解体実験さえも自ら行っていたむしろ開明的な学者だったことが分かります。

平田篤胤はさらには巷に伝えられる様々な怪異な事象(ここが荒俣宏の興味をそそる部分ではありますが)を、思い込みにとらわれずちゃんとした方法論に準拠して収集、分析しています。

今回読んだ2冊の本は、偶然どちらも荒俣宏が監修していたものですが、民俗学的な興味で色々な本を読んでいくと、やはり様々なところで、この人に出会いますね。

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