カンブリア紀の怪物たち

最近読んだ本:
(1)「僕が読んだ面白い本・ダメな本そして僕の大量読書術・驚異の速読術」/立花隆(文春文庫)
(2)「態度が悪くてすみません-内なる「他者」との出会い」/内田樹(角川書店)
(3)「カンブリア紀の怪物たち」/サイモン・コンウエイ・モリス(講談社現代新書)

(1)は2001年の出版で本紹介としては古いのだけど、立花隆の大量読書術という言葉につられて読みました。世の中には本を早く読む速読の技法というのがあって、立花隆も一般的な速読技法を使っていることが分かりました。速読法は情報を早く吸収するために、章立てにこだわらない読み方を薦めるのだけれど、僕は別に本を生業としているのではないので、本は最初から順番に読むというごく普通のやりかたで読んでますし、それを変えようとは思いません。この本の中で出てくる様々な本の中では博物誌的なジャンルに結構面白い本があったけど、立花隆はやはり「宇宙からの帰還」や「臨死体験」など、ルポルタージュやノンフィクションに限るなあ、というのが正直な感想です。

僕もご多分に漏れず邪馬台国や聖徳太子ものが好きな古代史ファンで、古代史関係で有名な論客である安本美典氏の私的講演会などにちょくちょく顔を出しているのですが、立花隆氏が新聞で安本美典氏の邪馬台国九州説を絶賛したため、それまで細々と開催していた講演会が満員になってしまったということがありました。ちなみに安本氏はすでに教職をリタイアしていますが、専門は(方法論に根本的な問題を抱えている)考古学ではなく数理文献学です。

(2)はとても難しい思想や概念を一言で言い切ってしまう尋常ならざる能力の持ち主である内田樹のお気楽なエッセイ集です。内田樹には、「寝ながら学べる構造主義」(文春新書)」という構造主義ファンには抱腹絶倒、専門家には噴飯物の怪作(なんといってもこれが彼の最高傑作ですね)があります。

生物学では、一世を風靡した「利己的な遺伝子」(読んだときはとても興奮しました)を著したダーウィンの正統な後継者とも言えるリチャード・ドーキンスと、「ワンダフルライフ」(残念ながら読んでません)を著した環境の影響を重要視しない立場のスティーヴン・ジェイ・グールドの有名な論争があります。後者のグールドの論拠というのがカンブリア紀における進化の爆発ともいえる多様な生物の出現でした。(3)は最近良くCG化された姿をTVで目にするあの奇妙な生物アノマロカリスに代表されるカンブリア紀の生物に関する最新の研究成果を、とても分かりやすく、かつ(ここが重要なところだけど)変に商業主義的な妥協をせずに記述したものです。本書でもその論点が最後に少し出てきますが、この論争自体については、ちくま学芸文庫からその名も「ドーキンス vs. グールド」という本が出てますので、「利己的な遺伝子」を読んで感動した経験を有する方にはこちらもお奨めです。

ドーキンスにしろ、コンウエイ・モリスにしろ、生物学には教育的な著作の能力がある人が輩出する土壌があるようです。ちなみに日本にはドーキンスの学説を男と女の話しに仕立て直して雑誌等で活躍している竹内久美子先生がいるのですが、こちらははっきりいってトンデモ本と批判されても仕方がない内容だと思います。

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